Rei's - faction:016
「レイ、それ取って」
「はい……」
 かちゃかちゃとボールの中で卵を溶く。
 やりにくいなぁ……
 シンジは背後のテーブルでじっと視線を固定させている赤い瞳を気にしていた。
「ねぇ、綾波ぃ」
「なに?」
「まだかかるからさ、テレビでも見てたら?」
「いい」
 うう、なに怒ってんだろ?
 睨み付ける様な目が恐い。
「はい、お兄ちゃん」
「あ、うん」
 碇家ではたまに両親が遅くなるため、こうして二人で夕食の準備をする事になる。
 今日のメニューはコロッケ、レイがパン粉を付けて、シンジが揚げる。
 決して油を触らせないのは兄心だ。
「レイ、それ皿に盛って」
「わかったわ」
「綾波ぃ、お皿運んでよ」
「うん……」
 気乗りしない様子で人数分の茶碗などを出していく。
「ねぇシンちゃん?」
「え、なに?」
「キスしよっか?」
 がしゃあんっと皿を巻き込んでひっくり返る。
「い、いきなり何を言うんだよ!」
「だってシンちゃん、洞木さんと付き合ってたんでしょ?」
「付き合ってないよ!」
「嘘!、だってみんな言ってたもん」
「あれはちょっと……」
「ちょっと?、ちょっとなに?」
「う……」
「言えないんだ?」
 冷たい目線に脂汗を流す。
「じゃあキぃスぅ☆」
「だからだめだってば!」
「どうしてぇ?」
「僕達兄妹なんだよ?、キスなんて変だよ!」
「……レイちゃんとは一緒にお風呂入ってるじゃない」
「入ってないだろ!?、あれはレイが勝手に……」
「嫌なのね」
「れ、レイ!?」
「そうそう、妹なんだから見たっていいじゃない」
「よくないよ!」
「キスもしてるんでしょ?」
「してないってば!」
「妹とのスキンシップは大事にしなくちゃね?」
「うん、お兄ちゃん……」
「だぁめぇだぁってばぁ!」
 ダンダンとテーブルを叩く度に、コロッケの山が軽く跳ねる。
「でもみんなに聞いたら、全校公認って感じだったよ?」
「それはぁ、洞木さんにも妹が居るからぁ」
「鈴原君にも居るわ」
「違うよぉ!、大体勘違いされたのはレイのせいだろ!?」
「え?、そうなの!?」
「そうだよ!、レイが浮気したって騒いだせいで、大変だったんだから!」
 聞きたい!
 綾波の瞳がきらりん☆、と光った。



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