「レイ、それ取って」
「はい……」
かちゃかちゃとボールの中で卵を溶く。
やりにくいなぁ……
シンジは背後のテーブルでじっと視線を固定させている赤い瞳を気にしていた。
「ねぇ、綾波ぃ」
「なに?」
「まだかかるからさ、テレビでも見てたら?」
「いい」
うう、なに怒ってんだろ?
睨み付ける様な目が恐い。
「はい、お兄ちゃん」
「あ、うん」
碇家ではたまに両親が遅くなるため、こうして二人で夕食の準備をする事になる。
今日のメニューはコロッケ、レイがパン粉を付けて、シンジが揚げる。
決して油を触らせないのは兄心だ。
「レイ、それ皿に盛って」
「わかったわ」
「綾波ぃ、お皿運んでよ」
「うん……」
気乗りしない様子で人数分の茶碗などを出していく。
「ねぇシンちゃん?」
「え、なに?」
「キスしよっか?」
がしゃあんっと皿を巻き込んでひっくり返る。
「い、いきなり何を言うんだよ!」
「だってシンちゃん、洞木さんと付き合ってたんでしょ?」
「付き合ってないよ!」
「嘘!、だってみんな言ってたもん」
「あれはちょっと……」
「ちょっと?、ちょっとなに?」
「う……」
「言えないんだ?」
冷たい目線に脂汗を流す。
「じゃあキぃスぅ☆」
「だからだめだってば!」
「どうしてぇ?」
「僕達兄妹なんだよ?、キスなんて変だよ!」
「……レイちゃんとは一緒にお風呂入ってるじゃない」
「入ってないだろ!?、あれはレイが勝手に……」
「嫌なのね」
「れ、レイ!?」
「そうそう、妹なんだから見たっていいじゃない」
「よくないよ!」
「キスもしてるんでしょ?」
「してないってば!」
「妹とのスキンシップは大事にしなくちゃね?」
「うん、お兄ちゃん……」
「だぁめぇだぁってばぁ!」
ダンダンとテーブルを叩く度に、コロッケの山が軽く跳ねる。
「でもみんなに聞いたら、全校公認って感じだったよ?」
「それはぁ、洞木さんにも妹が居るからぁ」
「鈴原君にも居るわ」
「違うよぉ!、大体勘違いされたのはレイのせいだろ!?」
「え?、そうなの!?」
「そうだよ!、レイが浮気したって騒いだせいで、大変だったんだから!」
聞きたい!
綾波の瞳がきらりん☆、と光った。
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