シャワーを浴びる、頭痛がする、吐き気も止まらない。
レイのあまり豊かでない胸を、シャワーのお湯が流れ落ちて川を作っていく。
口元を押さえ、冷たいタイルにもたれかかる。
そのまま崩れ落ちるように、湯船の縁に座り込んだ。
「うっ、ううっ、お兄ちゃん……」
泣き出す。
涙と嗚咽とシャワーのせいで呼吸が苦しい。
鼻が詰まり、すすり上げればお湯が入り込む。
それでも涙を止められない。
なるべく冷静を装って帰って来た。
もう帰るのかい?
ええ……
カヲルの前でも、平然とショーツを履き、ブラを付け、服を着た。
カヲルの視線なのに何も感じなかった。
なぜ?
シンジ以外の瞳なのに。
レイは振り返った。
「また来るといいよ」
カヲルはまだ裸だった。
下はジーンズを履いていたが、止められていないボタンから、下着を着けてない事が伺い知れた。
それが動揺になった。
「じゃ、さよなら」
レイはもう振り返らずに戸を開け、締めた。
そのまま帰って来る途中、夕べのことを想い返した。
たくさんカルピスチューハイを飲んだ。
そう、酔ったのね……
からんだのを覚えている。
お兄ちゃんだもの……
優しいからね?
みんなに優しいの、わたしは特別なの……
特に、そうだね?
でもそれは妹だから……
嫌なのかい?
好きにはなって貰えないもの……
いつかシンジ君は、誰かのものになるかもしれないね?
そんなの、嫌……
ぐしぐしと泣き出し、ジュースを煽る。
記憶が飛ぶ。
シャワーを浴び、裸になっていた。
そしてカヲルの布団に潜り込む。
そう、潜り込んだ、連れこまれたのではなくて……
カヲルが隣にもたれ掛かった。
髪をすき、撫でられる。
お兄ちゃん……
何故か同じ感じがして、レイは気持ちよさそうに目を閉じる。
いいのかい?
いいの。
カヲルの腕を引き、誘う。
知らない匂いがする。
カヲルの溜め息がレイの前髪を揺らし、くすぐった。
余った手で抱き寄せられる。
もういいの、知らないの。
お兄ちゃんはわたしを捨てるもの。
いつか……
ん……
そして朝になっていた。
「お兄ちゃん……」
シャワーを止める。
「お兄ちゃん……」
腰と股の間が痛かった。
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