Rei's - faction:019
 シャワーを浴びる、頭痛がする、吐き気も止まらない。
 レイのあまり豊かでない胸を、シャワーのお湯が流れ落ちて川を作っていく。
 口元を押さえ、冷たいタイルにもたれかかる。
 そのまま崩れ落ちるように、湯船の縁に座り込んだ。
「うっ、ううっ、お兄ちゃん……」
 泣き出す。
 涙と嗚咽とシャワーのせいで呼吸が苦しい。
 鼻が詰まり、すすり上げればお湯が入り込む。
 それでも涙を止められない。
 なるべく冷静を装って帰って来た。
 もう帰るのかい?
 ええ……
 カヲルの前でも、平然とショーツを履き、ブラを付け、服を着た。
 カヲルの視線なのに何も感じなかった。
 なぜ?
 シンジ以外の瞳なのに。
 レイは振り返った。
「また来るといいよ」
 カヲルはまだ裸だった。
 下はジーンズを履いていたが、止められていないボタンから、下着を着けてない事が伺い知れた。
 それが動揺になった。
「じゃ、さよなら」
 レイはもう振り返らずに戸を開け、締めた。
 そのまま帰って来る途中、夕べのことを想い返した。
 たくさんカルピスチューハイを飲んだ。
 そう、酔ったのね……
 からんだのを覚えている。
 お兄ちゃんだもの……
 優しいからね?
 みんなに優しいの、わたしは特別なの……
 特に、そうだね?
 でもそれは妹だから……
 嫌なのかい?
 好きにはなって貰えないもの……
 いつかシンジ君は、誰かのものになるかもしれないね?
 そんなの、嫌……
 ぐしぐしと泣き出し、ジュースを煽る。
 記憶が飛ぶ。
 シャワーを浴び、裸になっていた。
 そしてカヲルの布団に潜り込む。
 そう、潜り込んだ、連れこまれたのではなくて……
 カヲルが隣にもたれ掛かった。
 髪をすき、撫でられる。
 お兄ちゃん……
 何故か同じ感じがして、レイは気持ちよさそうに目を閉じる。
 いいのかい?
 いいの。
 カヲルの腕を引き、誘う。
 知らない匂いがする。
 カヲルの溜め息がレイの前髪を揺らし、くすぐった。
 余った手で抱き寄せられる。
 もういいの、知らないの。
 お兄ちゃんはわたしを捨てるもの。
 いつか……
 ん……
 そして朝になっていた。
「お兄ちゃん……」
 シャワーを止める。
「お兄ちゃん……」
 腰と股の間が痛かった。



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