「レイ、帰ったよ、レイ?」
こんこんとドアノック。
「レイ?」
部屋に入る。
「いないの?」
二段ベッドの上を覗く。
「レイ?」
が、レイは布団を頭から被って顔を見せようとしない。
「どうしたの?、レイ……」
しかしシンジを嫌うように、レイは一層深くシーツをずらす。
「……ケーキ、買って来たから、置いておくね?」
シンジは寂しそうに側を離れた。
「レイちゃんの様子が?」
「うん……、ずっとおかしいんだ、ねえ、何かあったの?」
「なにかって、何だい?」
「……カヲル君?」
カヲルはレイを盗み見ていた。
これはいけないねぇ……
今日のレイはいつも以上に、クラスの中で離れ小島を作っているように見える。
完全に一人で篭ってしまっていた。
「シンジ君、屋上、いいかな?」
「え?、うん、わかったよ……」
シンジは特に深く考えずに従った。
「まず客観的な事実から教えるよ?」
「う、ん……」
「土曜日はレイちゃんと裸で眠ったよ」
「え!?」
「起きた時には僕の胸に擦り寄っていた」
「そ、そう……」
シンジは胸の痛みや疼きを堪えるように顔を逸らした。
どうして、レイ……
どうしてもこうしてもない。
少々早くても、男女なのだから。
葛藤が目に見える、それをカヲルは冷静に見ている。
「そうなんだ!、よかった、レイがカヲル君と……」
シンジは顔を上げた、何かを押し隠して。
「本当にそう思っているのかい?」
「え?」
「……今の君は軽蔑するに十分だね?」
「カヲル君?」
カヲルの始めて見る冷たい視線に息を飲む。
「正直、レイちゃんの気持ちは分かっていたよ」
「レイの?」
「嫉妬からのあてつけだとしても、レイちゃんは魅力的だからね?」
「カヲル君!?」
「でも僕はレイちゃんを背負って生きるつもりは無いよ?、レイちゃんにはシンジ君に見捨てられたばかりで辛いだろうけど……」
「そんな!、どうしてだよ、どうして!」
「愛する者と生きる事が人の宿命だからだよ、でも僕は好意を持っているにすぎない」
「気持ちを……、レイの気持ちを裏切るって言うの!?」
「言ったろう?、レイちゃんもあてつけでの行動にすぎないんだよ、それで傷つくのは自分だとしてもね……」
「それがわかってて、レイを!」
「最初にレイちゃんの気持ちを無視したのはシンジ君じゃないのかい?」
「なにを……」
「一緒に出かける事も出来たんじゃないのかい?、でも君はそれをしなかった」
「それは……」
「レイちゃんの血の付いたシーツ、洗うのに苦労したよ」
「!?」
「初めてだったみたいだね?、レイちゃん」
「うわああああああ!」
シンジはその一言にぶち切れた。
「僕に当たるのは筋違いなのにね……」
シンジの腕を絡め取り、決める。
「肩、はずすよ?」
ゴキ!
鈍い音がして肩が外れる。
普通なら悶絶して転がるほどの痛みのはずだが。
ゴ、ガ!
転がっていたのはカヲルの方だった。
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