Rei's - faction:022
「ごめん!」
 謝ってすむ事ではないけれど、シンジは床に頭をつけて土下座していた。
「頭を上げてくれないかい?」
「でも!」
「僕にもこうなるように煽った責任があるからね?」
 保健室。
 カヲルは消毒液を染み込ませた脱脂綿に顔を歪めた。
 ちなみに治療はヒカリがしている。
「お兄ちゃんも……」
「え、あ、うん……」
 申しわけなさそうに顔を上げ、シンジはその手をレイに渡す。
 肩はカヲルにはめてもらったが、その時はシンジも絶叫を上げ、苦悶に震えていた。
 手当てをする間も、レイは肩をちらちらと見ている。
「あ、大丈夫だよ、まだ痛いけど……」
 その言葉にびくっと脅える、触れると酷くなりそうで恐いのだ。
 しかし反対に、傷ついた拳を愛しげに手で包んでいる。
「レイ?」
「お兄ちゃん……、これ」
「あ、うん……」
 照れてポリポリと頬を掻く。
「いて!」
 肩が痛んだ。
「まったく!、碇君も渚君もやりすぎよ!」
 ヒカリは本気で怒っていた。
「ごめんごめん、あんまりレイちゃんが泣くもんだからね?」
「そんなに泣いてたの?」
「酔ったからかもしれないね?、普段口にしないで溜めているからかも知れない、酔いつぶれるのと泣き付かれたのは同時だったよ」
「そうなんだ……、レイ」
「なに?」
「ごめんね?」
 レイは困ったような顔をした。
 わたしのために、ケンカをしてくれたのに……
 手の傷はシンジの心の表われだ。
 お兄ちゃん……
 涙目になってうつむく。
 うっ、え……っと嗚咽を漏らす。
「レイ……」
 シンジはその頭を、傷む手で抱き寄せた。
 それでいいんだよ……
 微笑を浮かべる。
 カヲルはこれを分からせるために芝居をした。
 シンジは別に言う必要は無いだろうと、レイに「一人で来てくれと頼まれた」とは言わなかった。
 たったその程度のすれ違いだった。
「多分初めての生理で情緒が不安定になっていたのさ」
「僕は……、そんな事にも気付かないで」
「普通は気がつかないでしょ!」
 ヒカリは怒りながら消毒液を片付ける。
「いい!?、葛城先生がうまく護魔化してくれたから、ちゃんとお礼を言っときなさいよ!」
「わかってるよぉ」
「そうだね?、心配をかけた時は謝るべきだよ」
 カヲルはいつものようにシンジに微笑んだ。
 シンジは照れたようにはにかんだ。



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