Rei's - faction:024
「碇君、なにしてるの?」
「あ、綾波……」
 ギシッと椅子の背もたれが鳴る。
「アルバム見てたんだ」
「アルバム?」
 シンジの後ろからノートパソコンの画面を覗く。
「あ、これって……」
 綾波も覚えのある風景と顔に懐かしんだ。
「小学校の時の?」
「うん」
 まだ綾波の部屋は用意されておらず、今だ三人同室のままである。
「綾波も一緒の学校だったって聞いたから、もしかしてと思って」
「うん……」
 頬が少し火照ってしまった。
 碇君……、思い出しちゃったらどうしよう?
 小さな頃の事とは言え、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
 シンジはカヲルからとっくに聞いていたのだが、綾波はまだ知らないと思っているままである。
「でも碇君とはクラス違ってたし、それに三年生になる前には引っ越しちゃったから……」
「うん……、卒業アルバムじゃダメみたいだから、ケンスケにデータコピーしてもらったんだけど」
「相田君に?」
「うん、あ、これかな?」
「あ!」
 一枚のクラス写真、その隅っこにうつむいた女の子が写っている。
「懐かしい……」
 ポツリと口から言葉が漏れる。
 今のような明るい表情ではなく、どちらかと言えば影を潜めて存在を消そうとしている。
 それでも特徴のある髪の色は隠せていない。
 瞳の色は……、細められてよくわからないが。
「あたし、この頃の写真って全然無くて……」
「え、どうして?」
「嫌いだったから」
「……そう」
「あ、ごめんね?」
「うん……、でもそれってさ」
「え?」
「色が嫌いなの?」
 綾波の頬の髪をつまむシンジ。
「それとも、いじめられたから、嫌いになったの?」
 ドキッとしてそのまま固まる。
「綾波……」
「え?、あ……」
 シンジは綾波の手を引くと、そのまま胸に抱き寄せた。
 女の子ではなく、妹を扱うように優しく頭を撫でつける。
「僕は……、似合ってると思う、綾波に」
「……変じゃない?」
「変かもしれない」
 胸がずきっと傷んだ。
「奇麗かどうかも……、正直よくわからないんだ、だけど綾波だから似合うんだと思う」
「そう……」
「綾波に一番似合うと思うよ?、だから、好きだな」
「え!?」
 胸のうずきが驚きに霧散した。
「僕は嫌いじゃないよ、綾波の髪って……」
「碇君……」
「お兄ちゃん」
「「え!?」」
 部屋の入り口で、レイが「むぅ!」っと頬を膨らませていた。



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