Rei's - faction:026
 授業が始まってすぐに沈没するというのは悪い生徒の見本なのかもしれないが、どこのクラスにもそうした生徒の一人や二人は居るものである。
 ただめったに眠らない者であったがために伏せっていだけで酷く目立ってしまっていた。


 赤い髪の女の子だ……
 その女の子は小さかった。
 あれ?
 良く見れば自分の目線も凄く低い。
 あれあれ?
 子供になっていた。
 自覚する、と同時に、子供達の声が聞こえだす。
「髪の毛金色だぁ!」
「奇麗!、一本ちょうだい!」
「痛いっ、やめて!」
「なんだよケチぃ」
「行こ行こ!」
 後に残されるのは髪の毛をくしゃくしゃにした女の子だけだった。
 それはないよなぁ……
 シンジは慰めてあげようと思ったが、足が動かず困惑した。
 あれ?
 あれれ?
 そうやって悩んでいると、女の子はキッと睨み付けて怒鳴り声を上げた。
「なによ!、笑ってないであっちに行きなさいよ!」
 ズキリと胸が傷む。
 この痛み……、嘘じゃない?
 夢だと気がつくと同時に、それが過去の出来事であるとも思い出した。
 ふいに灰色の制服を着た青年が現れた。
「何を泣いているんだ?」
 彼がしゃがみ込んで顔を覗くと、くすんくすんと女の子は急にしゃくりあげた。
「そっか、でもな?、みんなアスカが奇麗だから羨ましいのさ」
「奇麗なんて嫌!、だってみんなお友達になってくれないもん……」
「そうか……、けど今だけだ、大きくなったら変わるよ」
「嘘!」
「嘘じゃないさ……、誰だってお嫁さんにするなら可愛い子の方がいいからね?」
「ほんと!?」
「ああ」
「じゃあ……」
 急にモジモジと恥じらい出す。
「あたしを……、お嫁さんにしてくれる?」
「え?、はは……、参ったな」
「やっぱり嫌いなんだぁ」
 語尾に向かって上擦っていく。
「あ、十年、もう十年経ったら考えてあげるから」
「ほんと!」
「嘘泣きか……」
「やったぁ!、じゃあ約束ね!」
「あ、ああ……」
「あたし奇麗になる!、良い子でお勉強も出来て……、えっと、お料理も出来るようになって、それから……」
「はは……、期待してるよ」
「うん!」
 シンジはその光景をジト目で見ていた。


 パカン!
 やけに言い音がする。
「痛ぁ……」
「痛ぁじゃないでしょ!、なに熟睡してるの」
「あ、赤木先生……」
 怒らせてはいけない先生の内のワーストワンであった。
「寝るにしても、せめて教科書くらい開きなさい」
「え?、あ、はい!」
 慌てて端末を弄り、前の時間のテキストと入れ替える。
 どうやら休み時間をまたがって眠っていたらしい。
「ヒイキや!」
 廊下で立たされてる誰かの訴え。
「常習者にかける情けはないのよ」
 彼女のこめかみで血管が切れた。



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