「しっかしホンマ、センセが居眠りとは珍しいやないか?」
「うん……」
まだぼうっとしているらしい。
「なんや?、なんか悩んどんのか?」
「夢にさ……、赤い髪の女の子が出て来て」
ざっと一同の表情が変わる。
「シンジ君……」
ポンと肩に手が置かれる。
「僕は理解のある方だけど……、そう言う事はレイちゃんの前で話さない方が良いと思う」
「え?、なんで……、痛っ!」
ぎゅうううううう!っとシンジの首もとの肉をつまむレイ。
「な、なにさ!?」
「酷いシンちゃん!」
何か言おうとしたらしいレイを押しのけて綾波が叫ぶ。
「いくらあたしの髪が青いからって、今度は赤を制覇だなんて!」
「制覇ってなんだよ、制覇って!」
「昨日だってシンちゃんのせいで寝不足になっちゃったのに!」
「な、なんだよそれ……」
「「シンジぃ!」」
「うわぁ!」
「わしはお前を殴らないかん、いかんのや!」
「頼むシンジ!、カメラとは言わないからマイクだけでも仕掛けさせてくれ!」
「すぅずぅはぁらぁ!」
「……道徳的には、相田君を叱るべきじゃないのかい?」
「え?、やだっ、あたしそんなつもりじゃ!」
「どんなつもりなんだい?」
「そんなっ、だって鈴原に聞かないと言えない!」
「な、なんでわしに聞かんといかんのや!?」
「嫌ぁあああああ!、だって、鈴原ったら、鈴原ったら!」
「なんやねん!?、いったいなんなんやぁ!」
分けがわからないまま悶える二人。
「それで、お兄ちゃん……」
「れ、レイ……、恐いって」
「夕べ、わたしを寝かし付けてから、なにをしていたの?」
「何もしてないって!」
「と言うか、シンジぃ……、お前まだレイちゃんを寝かし付けてるのか?」
「さすがに子守り歌はもうしてないけど」
「子守り歌の代わりは、シンジ君の温もりと言う事かい?」
「何を言うのよ」
「シンちゃんってやぁらしぃ……」
「そんな目で見ないでよぉ!」
「お兄ちゃん……」
「だから!、何もしてないって!!」
「ほんと?」
「ほんとだってば!」
「怪しい……」
「お願いだよぉ……、どうしたら信じてくれるのさ?」
レイは少し悩んでから、半分おねだりするような口調でお願いした。
「チェロに誓って」
「え?」
「……誓って」
「わ、わかったよ……」
シンジが何か宣誓するのを見ながら、綾波はカヲルの耳に口を寄せる。
「ねぇ……、チェロに誓うって、なに?」
「ああ、チェロはシンジ君の特技の一つでね?、レイちゃんのためだけにチェロを弾くのさ」
「へぇ……」
「レイちゃんの音感は凄いからね?、嘘を吐いていると音が揺れるからわかるんだそうだよ、……どうしたんだい?」
「え?」
「羨ましいのかい?」
「ん……、うん」
ちょっと上目づかいになる。
「君もシンジ君に引いてもらったらどうだい?」
「ん〜〜〜、やっぱりやめとく」
「どうしてだい?」
「妹らしく、ゲームセンターとか遊園地とか映画館とか、一人でいっちゃ行けない所にお兄ちゃんに着いて来てもらうから!」
「……それはデートと言うんじゃないのかい?」
「妹だからデートにならないもん!、ねぇ?、シンちゃん!」
「……わたしも」
じぃっとこっちは指も咥えるレイ。
「余計な知恵付けさせないでよぉ!」
シンジは本気で泣きそうだった。
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