Rei's - faction:029
「こりゃまた懐かしい名前を思い出したもんだな?」
「はぁ……」
 申しわけなさそうなのは、あまり覚えていないためかもしれない。
 女の子は優先的にカウンター、これは加持の奢りでケーキが配られたからだ、残りは適当に座らされていた。
「アスカなら今でもメールが来るよ」
「へぇえ〜、じゃあやっぱり加持さん結婚するんですか?」
「おいおい、勘弁してくれよ」
 ぼりぼりと頭を掻く。
「幾らなんでも中学生だからな」
「ひかるげんじ……」
「いやぁんな感じぃ」
「ははは……、まあ、もうすぐこっちに帰って来るらしいけど」
「じゃあうちの学校に?」
「それはどうかな?、中学は学区もあるから、余所に行くって事もあるだろうさ」
 他にも何か含みを持った言い方である。
 シンジはそれをこう解釈した。
「余所に行ってくれるといいなぁ……、なんて思ってません?」
「ちょっとな?、シンジ君の方こそどうなんだ?」
「は?」
「そろそろ彼女を作らないのかい?」
「作りたいん……、ですけどね?」
 困り果てる、ぴとっとガードするように左右に張り付く妹達に。
「ま、人生色々、それもいいさ」
「よくないですよぉ……」
 うなだれるとすかさず腕をつねられた。
「いたっ!」
「知ってるかシンジ君?」
 その様子にくすくすと笑いを漏らす。
「女性の初体験の平均年齢はなんと十二歳だそうだよ」
「へぇ……、えええええ!?」
「なんやそりゃ!?」
「それっていかにもって子を対象にしたアンケートのやつでしょ?」
「お、良く知ってるなぁ相田君は」
 ケンスケは肩をすくめる。
「十二歳はどうかって普通思いますよ……、なぁ、委員長」
「フケツよーーーー!」
「ま、それはともかくとしてだ」
 真剣になる。
「なんとその内、相手が身内ってのは一割を越えるそうだ」
 きらりんと光る四つの瞳。
「ま、一割が多いか少ないかってのは難しい所だけど、なぁ、渚君」
「そうですね」
「お?、なんやその余裕は」
「僕は経験組だからね?」
「「「うえええええええ!」」」
「「師匠!」」
 何故かカヲルの両手を握るトウジとケンスケ。
「か、カヲル君ってそうだったの!?」
「両刀なのね……」
「変態」
「それはないんじゃないのかい?」
 特にレイの言葉に傷ついたようだ。
「僕を引き取ってくれたご夫婦の家は古くから道場を営んでいてね?、昔の習慣が残っているのさ」
「習慣って?」
「男児は十三歳で契りをかわし、嫁をめとるってことさ」
「「「よ、嫁!?」」」
 少女陣の顔が赤らむ。
「さすがに十三歳で結婚は出来ないからね?、婚約の代わりにって……、まあ彼女も心変わりするかもしれないし、そう深くは考えてないよ」
「で、でもしたんだろ!?」
「そうだね?、相田君」
「で、でででで、で、どやったんや!?」
「鼻息が荒いよ?、鈴原君」
「かぁあああああああっ、はぐらかすんやない!」
「そうだよ!、後学のため、ここはぜひ!」
「そうだねぇ?、それじゃあ一つだけ」
 グビッと誰かの喉が鳴る。
「体を鍛えておいて良かったと思ったよ」
「よっしゃあ!」
「がぁん!」
「鈴原ったら、もう☆」
「何を照れているんだい?、洞木さん……」
「レイ、綾波……、二人とも何やってんだよ?」
「「別に……」」
 シンジのシャツをまくり上げて、お腹の筋肉をぺたぺたと触っている。
「ははは、そんなに凄かったのか?」
「格闘技をやっているのはお互い様でしたからね?、背骨を折られるかと思いましたよ」
 何やら思い返しているようで、その顔はとても真剣味に満ちていた。



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