Rei's - faction:030
 ヘッドフォンを耳に掛け、シンジは二段ベッドにもたれていた。
 音楽の世界に閉じこもり今日の話を反芻している。
 カヲル君って……
 何故だか相手の女の子では無くて、カヲルがどんな風に何をしたのかに赤くなる。
「シンちゃん、やらしい……」
「あ、綾波!?」
 風呂上りらしく、タオルでごしごしやっている。
「渚くんのこと思い出してたんでしょ?、鼻の下伸びてる」
 慌てて手で隠すシンジ、根が正直である。
「そんなことだからムッツリって言われちゃうのよ」
「む、むっつり!?」
「みんな言ってるよぉ?、碇君って本当はムッツリじゃないかって」
「そんなぁ……」
「部屋にえっちな本隠して無いか探して来てって頼まれちゃった」
 舌を出す。
「ある分けないだろう?、そんなの」
「相田君のうちで読めばいいんだもんねぇ?」
「そうそう……、って違う!」
 器用に座ったままで地団駄を踏む。
「そう言うわけだから、はい」
「はいって……、なにこれ?」
「ドライヤー、知らない?」
「いや知ってるけど……」
 両手で弄ぶ。
「シンちゃんも女の子に慣れなくちゃねぇ?、あ、もう慣れてるのか」
「だぁかぁらぁ」
「妹としては緊張されてると意識しちゃうの!、そう言うわけだからドライヤーかけるの手伝って?」
「……なんだよもぉ、自分でやるのが面倒臭いんだろ?」
「えへへ〜」
 愚痴りながらも、ちょこんと座った妹の背中に回り込む。
「あれ?、このパジャマ……」
「あ、分かっちゃった?」
「僕用にって買って来た奴じゃないか」
「ん〜、シンちゃんじゃもう着れないからって、一回も着てないからもったいないしってもらっちゃった」
 やれやれ……、ってな感じでドライヤーとタオルを手に。
 それでも肩幅の分だけ首筋の部分がたるんでいて、少し背中が覗けてしまう。
 タオルで水分を吸い取りながら、ドライヤーはそのタオルを乾かすために使う。
 決して髪を直接熱風で煽ってはいけないのだ!、……とシンジは信じていた。
「ありがと☆、じゃ、寝る前のレモンティーよろしくぅ」
「……粉入れてお湯入れるだけなんだから、自分で入れろよなぁ?」
「優しいシンちゃんって大好き☆」
「な、何を言うんだよ……」
 真っ赤になって照れるシンジであるが、もちろんそんな状態を快く思わない人物がもう一人。
「お兄ちゃん……」
「れ、レイ、……なにさ?」
「ご本……」
「え?」
「読んで……」
「本って……」
 レイの抱いている本を見る。
「これ、絵本じゃないか……」
「そう」
 ちなみに小さい頃はいつも寝る前に読んでもらっていた本である。
「あのさぁ、もう中学生なんだから」
「ダメなのね、もう……」
「自分で読むの!、まったく」
「あらシンジ、妹には優しくしなくちゃダメでしょ?」
「か、母さん!?」
 いつの間にっと驚くがいつものことだ。
「少しぐらい甘えさせてあげてもいいでしょ?」
 うんうんと頷くレイに綾波も同調。
「あたしも甘やかしてもらったことないしぃ」
「綾波ぃ、頼むよぉ……」
「シンちゃあん、今度背中流して?」
「ええええええ!?、いきなりなに言い出すんだよ!?」
「だってレイちゃんとは一緒に入ってたんでしょ?」
「そんなの小さい頃の話じゃないか!」
「ズルいなぁ、いいなぁ……」
「指咥えてもダメ!、レイも上目づかいにならない!、ほら母さんが余計なこと言うから」
「あら?、お風呂に入ったくらいで子供なんてできないわよ」
「母さん!」
「お兄ちゃんの子供……」
「ほら変な事考え出してるじゃないかぁ!」
「だ〜いじょうぶだって、スキンシップならおっけー、おっけー!」
「おっけーじゃない!」
「往生際が悪いわねぇ?、問題無いわよ、別に子供ができたって」
「ユイ」
 ごほんとゲンドウの咳払い。
「あら、あなた、居たの?」
「ユイ〜〜〜」
 滂沱する。
「そんなことより!、問題無いってどういう事さ!?」
 父を押しのけるシンジ。
「気にしなくてもいいのよ?」
「するに決まってるだろ!、父さん、何隠してるのさ!?」
「隠してなどいない」
 根に持ったようである。
「嘘だ!」
「問題はあると言っている」
「そんなの当たり前じゃないか!」
「そうだな……、十四で「ししゃも」も辛いだろう、せめて骨盤が固まってからにしなさい」
「ああそうね!、ちゃんと子供が産める体にならなくちゃ」
「ちーがーうー!」
「せいぜい世間様に後ろ指差されぬようにするのだな」
 ニヤリと笑む。
「しないってばぁ!」
 二人は幸福なほどの満足感を手に引き上げていった。
「ほんと、いつまで経っても、からかわれてるのが分からないのね」
「まったくだ」
 後にシンジの屍が残ったかどうかは不明である。



続く




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