ヘッドフォンを耳に掛け、シンジは二段ベッドにもたれていた。
音楽の世界に閉じこもり今日の話を反芻している。
カヲル君って……
何故だか相手の女の子では無くて、カヲルがどんな風に何をしたのかに赤くなる。
「シンちゃん、やらしい……」
「あ、綾波!?」
風呂上りらしく、タオルでごしごしやっている。
「渚くんのこと思い出してたんでしょ?、鼻の下伸びてる」
慌てて手で隠すシンジ、根が正直である。
「そんなことだからムッツリって言われちゃうのよ」
「む、むっつり!?」
「みんな言ってるよぉ?、碇君って本当はムッツリじゃないかって」
「そんなぁ……」
「部屋にえっちな本隠して無いか探して来てって頼まれちゃった」
舌を出す。
「ある分けないだろう?、そんなの」
「相田君のうちで読めばいいんだもんねぇ?」
「そうそう……、って違う!」
器用に座ったままで地団駄を踏む。
「そう言うわけだから、はい」
「はいって……、なにこれ?」
「ドライヤー、知らない?」
「いや知ってるけど……」
両手で弄ぶ。
「シンちゃんも女の子に慣れなくちゃねぇ?、あ、もう慣れてるのか」
「だぁかぁらぁ」
「妹としては緊張されてると意識しちゃうの!、そう言うわけだからドライヤーかけるの手伝って?」
「……なんだよもぉ、自分でやるのが面倒臭いんだろ?」
「えへへ〜」
愚痴りながらも、ちょこんと座った妹の背中に回り込む。
「あれ?、このパジャマ……」
「あ、分かっちゃった?」
「僕用にって買って来た奴じゃないか」
「ん〜、シンちゃんじゃもう着れないからって、一回も着てないからもったいないしってもらっちゃった」
やれやれ……、ってな感じでドライヤーとタオルを手に。
それでも肩幅の分だけ首筋の部分がたるんでいて、少し背中が覗けてしまう。
タオルで水分を吸い取りながら、ドライヤーはそのタオルを乾かすために使う。
決して髪を直接熱風で煽ってはいけないのだ!、……とシンジは信じていた。
「ありがと☆、じゃ、寝る前のレモンティーよろしくぅ」
「……粉入れてお湯入れるだけなんだから、自分で入れろよなぁ?」
「優しいシンちゃんって大好き☆」
「な、何を言うんだよ……」
真っ赤になって照れるシンジであるが、もちろんそんな状態を快く思わない人物がもう一人。
「お兄ちゃん……」
「れ、レイ、……なにさ?」
「ご本……」
「え?」
「読んで……」
「本って……」
レイの抱いている本を見る。
「これ、絵本じゃないか……」
「そう」
ちなみに小さい頃はいつも寝る前に読んでもらっていた本である。
「あのさぁ、もう中学生なんだから」
「ダメなのね、もう……」
「自分で読むの!、まったく」
「あらシンジ、妹には優しくしなくちゃダメでしょ?」
「か、母さん!?」
いつの間にっと驚くがいつものことだ。
「少しぐらい甘えさせてあげてもいいでしょ?」
うんうんと頷くレイに綾波も同調。
「あたしも甘やかしてもらったことないしぃ」
「綾波ぃ、頼むよぉ……」
「シンちゃあん、今度背中流して?」
「ええええええ!?、いきなりなに言い出すんだよ!?」
「だってレイちゃんとは一緒に入ってたんでしょ?」
「そんなの小さい頃の話じゃないか!」
「ズルいなぁ、いいなぁ……」
「指咥えてもダメ!、レイも上目づかいにならない!、ほら母さんが余計なこと言うから」
「あら?、お風呂に入ったくらいで子供なんてできないわよ」
「母さん!」
「お兄ちゃんの子供……」
「ほら変な事考え出してるじゃないかぁ!」
「だ〜いじょうぶだって、スキンシップならおっけー、おっけー!」
「おっけーじゃない!」
「往生際が悪いわねぇ?、問題無いわよ、別に子供ができたって」
「ユイ」
ごほんとゲンドウの咳払い。
「あら、あなた、居たの?」
「ユイ〜〜〜」
滂沱する。
「そんなことより!、問題無いってどういう事さ!?」
父を押しのけるシンジ。
「気にしなくてもいいのよ?」
「するに決まってるだろ!、父さん、何隠してるのさ!?」
「隠してなどいない」
根に持ったようである。
「嘘だ!」
「問題はあると言っている」
「そんなの当たり前じゃないか!」
「そうだな……、十四で「ししゃも」も辛いだろう、せめて骨盤が固まってからにしなさい」
「ああそうね!、ちゃんと子供が産める体にならなくちゃ」
「ちーがーうー!」
「せいぜい世間様に後ろ指差されぬようにするのだな」
ニヤリと笑む。
「しないってばぁ!」
二人は幸福なほどの満足感を手に引き上げていった。
「ほんと、いつまで経っても、からかわれてるのが分からないのね」
「まったくだ」
後にシンジの屍が残ったかどうかは不明である。
続く
[BACK]
[TOP]
[NEXT]