Rei's - faction:032
「どないしたんや、綾波の奴」
「う、うん……」
 シンジは首を傾げていた。
 いつもなら隣を歩いて登校する綾波が、今日は一歩どころか何メートルも先を一人でさきさき歩いて行くのだ。
「喧嘩……、っちゅう訳でも無さそうやし」
 時折ちらちらと振り返って来るのだが、目が合うと赤くなって慌てて前を向いてしまうのだ。
 心持ち歩調も早くなって距離を開ける。
 そして数歩先にアドバンテージを取ると、段々足は遅くなり、そしてまた元の距離に戻ってくる。
 以下延々とくり返し。
「ほんと、どうしちゃったんだろ?」
 シンジにはわからない、だが……
「…………」
 シンジの隣に居るレイは、きつい視線で彼女を見ていた。


「ねぇ、綾波さん……」
 途中、合流したヒカリは奇妙な行動を取っている綾波に遠慮がちに話しかけた。
「何があったの?」
「え?、ええ!?、な、なにって……、その」
 ぽっと頬を染めて真下に俯く。
 その態度はまさに『なにか特別な事があった時の自分』に良く似ているわけで……
「まさか……」
 ヒカリはギギギッと音をさせながら首を背後へと振り向かせた。
「なんや、こっち見とるで?」
「……うん」
「碇君……」
 ヒカリはぎりぎりで届くような声を漏らした。
「責任……、取りなさいよ?」
「へ?」
「ちょ、ちょっと洞木さん!、そうなじゃないのっ、違うからぁ!!」
 ヒカリを引きずり、駆けるように逃げ去っていく綾波であった。



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