「綾波……、どうしたんだろう?」
HR前に姿を消した綾波。
シンジは彼女の机を眺めながらポツリと漏らした。
「病気、かな?」
「相田くぅん!」
その瞬間、ざわっと教室がざわめいた。
「な、なんだよ?」
ケンスケも周囲の反応に少し引いた。
「俺が女の子に名前を呼ばれちゃいけないのかよ、まったく」
ぶちぶちと言いながらも、気にしていたのだろう。
周囲の空気は読んでいるようだ。
「で、なに?、委員長」
「ちょっとね?、綾波さんのことで」
(え?)
シンジはその名前に敏感に反応した。
廊下を見る、赤くなって俯く綾波と、その前でまた赤くなったケンスケが見える。
「「「あああああー!」」」
教室中で悲鳴が上がった。
とにかくと言った感じで歩き出したケンスケの後を、綾波が俯きながらも恥じらうように従ったのだ。
「……なんや、そういうわけか」
「なにが?」
「……ほんまにそう思とんのか?」
「ごめん……」
シンジは呆れ顔のトウジに答えることで、ようやく現実を認める気になれたのだった。
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