「あ、あのさぁ……」
「なに?」
屋上に引っ張って来たケンスケは、その恥じらう姿にもまた赤くなった。
「そういうこと、なんで俺に聞くわけ?」
「ど、どうしてって……、その」
ちょんちょんと人差し指を突っつき合わせる。
「他に聞けそうな人、居なくて」
「それで委員長と俺ならって事になったわけ?」
綾波はコクンと頷いた。
「はぁ……」
予鈴が鳴る、もうすうHRが始まるだろう。
「じゃあ答えるけどさ」
「うん……」
ケンスケは一瞬溜めてから一気に話した」
「朝そうなってるのはエッチな夢を見たから、なんてのは嘘だよ」
「……そうなの?」
疑い深い赤い瞳。
「だからシンジが『誰の夢を見たのか?』なんて考えるだけ無駄だからさ?」
「そう……」
ほっとした反面、残念な部分もあるようだ。
そんな綾波の様子に、ケンスケもようやく笑みをこぼした。
「そりゃそういう夢を見る時もあるだろうけど……、血圧の関係で集中してるだけ……、だったかな?」
「だよね?」
綾波も笑い返す。
「だから委員長にもトウジが誰の夢を見てるのかなんて考えるなって言っといてくれよ?」
「あはははは……、バレてた?」
「当ったり前だよ……、綾波より委員長が考えそうな事だしね?」
二人は揃って柵にもたれた。
「綾波……、好きなんだな、シンジの事が」
「そう?、……良くわからない」
「わからない?」
「わからなくなっちゃった……」
黄昏る。
「最初はね?、……優しい人だと思ったの、髪のこととか」
「ああ……」
「でもほら……、レイちゃん見てると、お兄さんなんだなぁって」
「羨ましくなった?」
頷く。
「でも今度は……、でしょ?」
どのシンジがいいのか、自分でも判断がつかないのだ。
そんな姿にケンスケはぽろっと漏らした。
「シンジは気にしてるみたいだけどな……」
「え?」
「綾波のこと」
「そうなの……、かな?」
確かにレイに向けられているものとは違う視線を感じている。
「ほら」
そんな感想を裏付けるように、顎で示されて下を見た。
「あ……」
教室、そこは自分達のクラスだ。
その一つの座席から、自分を見上げているシンジの姿が良く見えた。
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