Rei's - faction:038
「綾波さん!」
 学校裏の焼却炉前。
 定番とも言えるこの場所で、事態は急変を迎えていた。
 相手のいきごみにびびる綾波、校舎の角や草むらにも隠れ潜んでいる気配を感じているのもある。
 彼は代表なのだ、それだけは分かったが……
「相田と付き合うって、本当ですか!?」
(血の涙?)
 綾波は大真面目にそれが見えた気がしたが、虚を衝かれた自分をなんとか維持するので精一杯だった。
「ちょ、ちょっと待って、ねぇ?」
「はい!」
 敬礼でもしそうな勢いで姿勢を正す。
「……どうしてそう言う話しになるの?」
「ど、どうしてってそれは……」
「それは?」
 小首を傾げる、その仕草のあどけなさに少年Aは赤くなる。
「ぼ、僕が綾波さんのこと好きだから!」
「「「抜け駆けすんなぁ!」」」
「きゃ!」
 綾波は周囲からの罵声に驚いたが、……皆はなんとか叫ぶだけで堪えたようだ。
 飛び出しては来なかった。
 一方、綾波は……
(好き……、って、じゃあ)
 綾波レイはシンジ達のように鈍くはない。
 それはこのような状況を想像しては、「縁、ないよね……」と諦めていたからだ。
 それでもまさかと言う想いが過る。
(あたしって……、モテるんだ)
 彼女にとっては驚愕の事実であった。
(じゃなくてぇ!)
 綾波は話しの食い違いに気が付いた。
「そうじゃなくて!、そのあたしが相田君と付き合うって話し、何処から出て来たの!?」
「じゃ、じゃあやっぱり……」
「うん」
「本当なんですかぁ……」
「誤解なんだけどぉ」
「え?」
「え?」
 がっくりとうなだれた少年と、あっけらかんと言い放った綾波の二人。
 二人が揃ったのは最後のキョトンとした表情だけだった。
「だ、だから、あたし、別に相田君と付き合ってるわけじゃないし」
 慌てたように空気を動かす。
「そうなんですか!?」
 よっしゃあ!、っと言う空気が周辺からのろしのように立ち昇った。
「じゃ、じゃあ、俺と!」
「「「ちょっと待ったぁ!」」」
「ごめんねぇ?」
 綾波はその全部に頭を下げた。
「わたし、他に好きな人居るから……」
 とまあ、結局一同はどん底に突き落とされてしまうのだった。



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