「綾波さん!」
学校裏の焼却炉前。
定番とも言えるこの場所で、事態は急変を迎えていた。
相手のいきごみにびびる綾波、校舎の角や草むらにも隠れ潜んでいる気配を感じているのもある。
彼は代表なのだ、それだけは分かったが……
「相田と付き合うって、本当ですか!?」
(血の涙?)
綾波は大真面目にそれが見えた気がしたが、虚を衝かれた自分をなんとか維持するので精一杯だった。
「ちょ、ちょっと待って、ねぇ?」
「はい!」
敬礼でもしそうな勢いで姿勢を正す。
「……どうしてそう言う話しになるの?」
「ど、どうしてってそれは……」
「それは?」
小首を傾げる、その仕草のあどけなさに少年Aは赤くなる。
「ぼ、僕が綾波さんのこと好きだから!」
「「「抜け駆けすんなぁ!」」」
「きゃ!」
綾波は周囲からの罵声に驚いたが、……皆はなんとか叫ぶだけで堪えたようだ。
飛び出しては来なかった。
一方、綾波は……
(好き……、って、じゃあ)
綾波レイはシンジ達のように鈍くはない。
それはこのような状況を想像しては、「縁、ないよね……」と諦めていたからだ。
それでもまさかと言う想いが過る。
(あたしって……、モテるんだ)
彼女にとっては驚愕の事実であった。
(じゃなくてぇ!)
綾波は話しの食い違いに気が付いた。
「そうじゃなくて!、そのあたしが相田君と付き合うって話し、何処から出て来たの!?」
「じゃ、じゃあやっぱり……」
「うん」
「本当なんですかぁ……」
「誤解なんだけどぉ」
「え?」
「え?」
がっくりとうなだれた少年と、あっけらかんと言い放った綾波の二人。
二人が揃ったのは最後のキョトンとした表情だけだった。
「だ、だから、あたし、別に相田君と付き合ってるわけじゃないし」
慌てたように空気を動かす。
「そうなんですか!?」
よっしゃあ!、っと言う空気が周辺からのろしのように立ち昇った。
「じゃ、じゃあ、俺と!」
「「「ちょっと待ったぁ!」」」
「ごめんねぇ?」
綾波はその全部に頭を下げた。
「わたし、他に好きな人居るから……」
とまあ、結局一同はどん底に突き落とされてしまうのだった。
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