Rei's - faction:043
「近ごろの子は恥ずかしがり屋なのねぇ……」
「母さんが変なだけだよ……」
 はぁっと溜め息。
 取り敢えず体操服に着替えたレイ達は腹筋に励んでいる。
「じゅうぅうううう、きゅううううぅうううう……」
「……にじゅう」
「ぅううううう、にぃいいいいい、じゅうううううう……」
「……にじゅいち」
「これ」
 ぺしっとレイの頭をはたくユイ。
「痛い……」
「ちゃんと体を起こしなさい」
 頭を両手で押さえて涙を浮かべる。
 ぐしっと下唇も持ち上げる。
 シンジを動揺させる必殺の顔だが、当然ユイには通じなかった。
「サボってもいいわよ?、でもその間にレイちゃんは美人になっちゃうわね」
「……やる」
「よろしい」
 にっこり微笑み、頭をかいぐりすることは忘れない。
「さ、シンジはお夕飯の準備を手伝ってね」
「……母さん」
「なに?」
 シンジは部屋を出た所で声を潜めた。
 閉めた戸の向こうから、二人の苦しげな声が聞こえて来るが。
 またそれがシンジには気になっていた。
「……ほんとにあれ、効果あるの?」
「あるんじゃないかしら?」
 ん〜っと、ホッペに手を当てて首を捻る。
 シンジはやっぱり、と壁に手を突いて項垂れた。
「そんないい加減な……」
「これも息抜きの内よ」
 ユイはポンとシンジの頭に手を置いた。
「女の子はね?、男の子以上に元気が余ってるの、だから少しは付き合ってあげなさい」
 そう言ってキッチンへ行くユイの背中に、シンジは唇を尖らせた。
「……結局、自分が遊びたいだけなんじゃないか」
 彼女が一番楽しんでいるのは間違い無かった。


「レイー、レイちゃーん!、ごはんですよぉー!」
「はぁい!」
 代表して返事をしたのは綾波であった。
 二人とも揃えたように頭をタオルで拭いている。
 一通りのメニューを消化してから、シャワーを浴びて来た様子だった。
「やった、えびふらい!」
 彼女は満面に笑みを湛えてパンと手を打った。
「痩せた分、太るのね」
「うっ……」
 その頃、シンジは。
「なにやってんの、父さん……」
「シンジか、早く解け」
「うん……」
 父は何故だかロープで団子状に縛られ、ベッドの上に転がっていた。
「これっ、誰がやったのさ!」
 余りの固結びに力を入れる。
「ふっ、母さんだ」
「あっ、そう!」
 外れない。
 それ以前に、腕が背中にあって頭の上に足があるのはどうしてなのだろう?
「母さんって……、手加減しないんだね」
「もう一回り若ければ、この程度の縄、抜けて見せるのだがな」
「あ、そう……」
 シンジはずきずきと痛む頭を堪えた、きっと考えてはいけない事だからだ。
(良く考えたら、どうせレイ達のレオタード姿でも覗こうとしたんだろうし、同情する事も無いよな)
 緩めるつもりで、ギュウッと紐を引っ張ってしまう。
 ぐえっとカエルが喉を潰したような声が聞こえたが、シンジは全く気が付かなかった。



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