「近ごろの子は恥ずかしがり屋なのねぇ……」
「母さんが変なだけだよ……」
はぁっと溜め息。
取り敢えず体操服に着替えたレイ達は腹筋に励んでいる。
「じゅうぅうううう、きゅううううぅうううう……」
「……にじゅう」
「ぅううううう、にぃいいいいい、じゅうううううう……」
「……にじゅいち」
「これ」
ぺしっとレイの頭をはたくユイ。
「痛い……」
「ちゃんと体を起こしなさい」
頭を両手で押さえて涙を浮かべる。
ぐしっと下唇も持ち上げる。
シンジを動揺させる必殺の顔だが、当然ユイには通じなかった。
「サボってもいいわよ?、でもその間にレイちゃんは美人になっちゃうわね」
「……やる」
「よろしい」
にっこり微笑み、頭をかいぐりすることは忘れない。
「さ、シンジはお夕飯の準備を手伝ってね」
「……母さん」
「なに?」
シンジは部屋を出た所で声を潜めた。
閉めた戸の向こうから、二人の苦しげな声が聞こえて来るが。
またそれがシンジには気になっていた。
「……ほんとにあれ、効果あるの?」
「あるんじゃないかしら?」
ん〜っと、ホッペに手を当てて首を捻る。
シンジはやっぱり、と壁に手を突いて項垂れた。
「そんないい加減な……」
「これも息抜きの内よ」
ユイはポンとシンジの頭に手を置いた。
「女の子はね?、男の子以上に元気が余ってるの、だから少しは付き合ってあげなさい」
そう言ってキッチンへ行くユイの背中に、シンジは唇を尖らせた。
「……結局、自分が遊びたいだけなんじゃないか」
彼女が一番楽しんでいるのは間違い無かった。
「レイー、レイちゃーん!、ごはんですよぉー!」
「はぁい!」
代表して返事をしたのは綾波であった。
二人とも揃えたように頭をタオルで拭いている。
一通りのメニューを消化してから、シャワーを浴びて来た様子だった。
「やった、えびふらい!」
彼女は満面に笑みを湛えてパンと手を打った。
「痩せた分、太るのね」
「うっ……」
その頃、シンジは。
「なにやってんの、父さん……」
「シンジか、早く解け」
「うん……」
父は何故だかロープで団子状に縛られ、ベッドの上に転がっていた。
「これっ、誰がやったのさ!」
余りの固結びに力を入れる。
「ふっ、母さんだ」
「あっ、そう!」
外れない。
それ以前に、腕が背中にあって頭の上に足があるのはどうしてなのだろう?
「母さんって……、手加減しないんだね」
「もう一回り若ければ、この程度の縄、抜けて見せるのだがな」
「あ、そう……」
シンジはずきずきと痛む頭を堪えた、きっと考えてはいけない事だからだ。
(良く考えたら、どうせレイ達のレオタード姿でも覗こうとしたんだろうし、同情する事も無いよな)
緩めるつもりで、ギュウッと紐を引っ張ってしまう。
ぐえっとカエルが喉を潰したような声が聞こえたが、シンジは全く気が付かなかった。
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