翌日。
『うっきゃーーー!』
悲鳴が上がってビリビリと揺れる。
「うきゃ?」
寝癖の付いたぼさぼさ頭で、シンジは寝ぼけた反応を示してしまった。
何しろいつもは自分が悲鳴を上げる立場である。
悲鳴で起こされるなど初めてのことだ、少々反応が鈍くても仕方があるまい。
「……って、はっ!?、今の綾波!」
ようやく起動したのか部屋を飛び出す。
「綾波!、どうしっ」
「入って来ちゃダメ!」
「ごごご、ゴメン!」
怒られ慌てて部屋を出る、見えたのは入って来たシンジに慌てて、妹の体をシーツで隠す少女の姿。
「で、でもどうしてレイが!?」
「レイちゃん!、お兄ちゃんはあっちよ、ほら!」
裸で抱きついていたレイは、寝ぼけ眼を開くとじ〜っと姉の顔を見つめた。
ばふっとまた胸に顔を埋める。
「レイちゃん間違ってるって!」
「間違ってない」
「あん!」
「今日はお姉ちゃんでいいの」
「良いってなにがぁ!?」
レイが喋る度にくすぐったいのか、悶えに悶える。
「お母さんが言ったの、お姉ちゃんが好きならお兄ちゃんと同じように甘えてあげなさいって」
「いや、甘えるってそれは……」
「ダメ?」
顔を上げた上にじ〜っと見る。
「ダメなの?」
じーっと見る、いたいけで円らな瞳で。
「ダメなのね」
「ああっ、だ、ダメじゃないけど!」
「そう、よかった」
「ひーん!、シンちゃあん!」
喉まで鳴らし始めたレイに困りまくるのだが。
−どたどたどたどたどた−
シンジはとっくに鼻血を吹いて、妹の部屋から逃げ出していた。
「で、この状態ってわけなんだ」
「そう」
「そうなのか」
「なんちゅうか」
「素敵……」
「「「「えっ……」」」」
激汗を流してヒカリより引く一同である。
「な、なあ、委員長ってもしかして」
「かな?」
「じゃあ、やっぱりそうなんだねぇ」
「委員長、そういう趣味やったんか」
「んなこと言ってないで助けてよぉ……」
もう声が弱々しいレイである。
教室中、二人のレイに対して好奇の視線が向けられていた、何しろ、色違いだが同じ顔をしている二人がいちゃついているのだから、これ以上の見世物は無いだろう。
「うう……、なんだかシンちゃんの気持ちが分かった気がする」
「そう?」
「だって、う」
またじ〜っと見ているレイだ。
「嫌なの?」
「そんな事ないって!、嬉しいよ、うん!」
ニコッと微笑んで、また胸に顔を埋める。
どうやらシンジと違う柔らかさが気に入ってしまったようなのだが、上のレイもレイでそんな喜びようについつい赤面して許してしまっていた。
「嬉しいんだね」
カヲルの問いかけにびくっと脅える。
「だ、だってレイちゃん、ほんとに嬉しそうにしてくれるから」
「そうなんだよね」
うんうんと共感するシンジである。
「泣くか笑ってくれるかのどっちかだから、強く出られないんだよね」
「分かってるなら変わってよぉ!」
「スキンシップでしょ?」
「シンちゃあん!」
本気の泣き笑いというのはこういう物だろう。
「ごめん、僕にはどうすることも出来ないんだ」
「っちゅうかどうかにか出来とったら、今までも何とかしとるわなぁ」
「うんうん」
「酷い……」
兄の言い草にぐしっと来たらしい。
「あ、ほらシンちゃん!」
「ご、ごめん、レイ!」
「お兄ちゃんなんて知らない」
「レイ!?」
「お姉ちゃんは、裏切らない?」
じーっと見られて逆らえるはずもなく。
「はい……」
項垂れてしまう、レイだった。
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