「仲良きことは、美しきかな、だね」
かこ、っとカヲルはENTERキーを押して送信した。
自室、テーブルの上にはノートパソコン、どうやらチャット中らしい。
「なになに?、虫を付けるな、追い払っておけ?、なら今の状態は君の望んでいる状況、そのものじゃないのかい?、違う?、もっと二人をくっつけて、シンジ君をフリーにしろって、あざといねぇ君は、それでも僕の許嫁なのかい?」
数十行ほど改行無しの物凄い返事が送られて来た。
「分かってるよ、あれは偽装だって話しだろう?」
カヲルは目を閉じてにやけた。
(始めまして、あなたが渚カヲルね?)
そう言って赤い髪の少女は抱きついて来た……、と思えばそのままベアハッグに入った!
(死んでちょうだい!、あんたが死んでくれれば全てが丸く収まるのよぉおおおお!)
「あれは死ぬかと思ったよ、え?、女の子はか弱いんだから身を守るには不意打ちくらい当然だって?、君なら素手で野人とだって張り合えるさ、ヤジンって何?、聞かない方がいい、馬鹿にしてるなって?、いいや、知らない方が良いって事さ」
ひたすら相手をからかい続ける。
「それで、そっちは上手く行ってるのかい?、すっかり本当にシちゃったと思ってるって?、まあ、僕達がシたと言い張っている以上、確かめる方法なんてないからね、でも、一つ問題があってねぇ」
カヲルは数秒、続きを打つのをためらった。
「……君が知り合いだったなんて気が付かなくてね、つい言っちゃったんだよ、まさかって?、その通りさ」
こんどは数百行、スクロールが止まらない。
「まあ、こっちに来たら誤解を解いて上げるよ、その前に解いておけ?、話しはどう伝わるか分からないよ?、良いじゃないか、シンジ君には証拠を上げれば、証拠って何よ?、もちろん決まってるだろう?、純潔さ」
反応が無くなった。
「ま、それもこれも君がそこから逃げられたらの話しだからね、え?、身代わりにしたのは誰だって?、ははは、知らないよ、じゃあね」
そう言って勝手に接続を切ってカヲルはふうっと満足げにした。
「本当にからかうと楽しいねぇ、アスカちゃんは」
窓の外を見る、もうすっかりどっぷり、夜だった。
「え、いや、あの、お風呂だけは……」
「どうして?、昨日は入ったのに」
「あ、いや、でも」
壁に張り付き、ちらちらと横目を向けて助けを乞うのだが。
(シンちゃんのばかぁ!)
我関せずと態度を決めたらしい、のほほんとくつろいでいるシンジが居る。
「……お兄ちゃんと入る」
飛び火。
「それでもいいのね」
にやりと……、詰め寄ってお願いし、悲しげに俯き、今度はまた厭らしく笑い始めた。
「レイ!」
慌ててシンジが言う。
「ちゃんとお姉ちゃんに洗ってもらうんだぞ!」
「分かったわ」
「シンちゃあん!」
腕を組まれてずりずりと……、反対向きのまま引きずられていく。
「ごめん……、今度奢るから」
「やくそくよぉおおお!」
……半ば自棄っぱちな叫びであった。
「レイも極端なんだよな」
「行ったか」
「父さん?」
「さ、お茶にしましょう」
「母さんまで……、今まで何処に居たのさ?」
「ふっ、気にするな」
「様子を見てただけよ、シンジに話しがあってね」
「僕に?」
「ああ、二人には聞かせられない話しだからな」
「どういう事?」
「シンジ」
「なに?」
「お前はな、この家で生まれた子ではないのだ」
「はい?」
シンジはぽかんと……、間抜け面を晒してしまった。
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