He was aware that he was still a child.
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これか……
ヘッドフォンを付けて、僕は加持さんから貰ったディスクを見ている。
沢山の人の言葉と、父さんと誰かの会話。
それは本来、ミサトさんに渡るはずのものだった。
「葛城博士の提唱したスーパーソレノイド機関ですが……」
「あれはあまりに突飛過ぎるよ」
「まだ仮説の段階にすぎん代物だ」
「しかしあの巨人の動力は、S2理論以外では説明できません」
「図らずとも既に実証済みですよ、アレは」
「現実に存在していたのだから、認める他あるまい」
「データの検証が全て終わればそうするよ」
「ロンギヌスの槍は?」
「先週死海からこっちに陸揚げされたままです」
「地下に送る前に処理は必要だろ、大丈夫か?」
「提供者との接触実験は来月13日を予定しております」
「調整は間に合うようだな」
「今度の実験は提供者とのフィールドの、自我境界線をもってだな」
「碇さん達は今度の12日にここを発つそうです」
「喫煙コーナーをもう少し設置して欲しいな」
「全施設禁煙の話もあったそうですよ?、あるだけマシです」
「そうなったらここには居ないさ、タバコ無くして仕事はできんよ」
「科学者というのは、どうも自分の考えを信じ過ぎる」
「独善的ですな」
「思い込みが激し過ぎるのだ、現実を的確に把握できん連中だからな」
「そういう人種が真実を求めている、皮肉なものです」
「彼らはそんな崇高なものではない、発見は喜びであり、理解は支配に繋がる、求めているのは自分の気持ちの錯覚だ」
「表面の発光を止めろ、予定限界値を越えている」
「異常事態、異常事態、総員防護服着用、第二セントラルの作業員は、至急セントラルドグマ上部へ非難して下さい」
「アダムにダイブした遺伝子は、既に物理的融合を果たしています」
「ATフィールドが、全て解放されていきます」
「槍だ、槍を引き戻せ」
「ダメだ、磁場が保てない」
「沈んでいくぞ」
「わずかでもいい、被害を最小限に食い止めろ」
「極地的に大気の分解がすでに」
「構成分子のクォーク単位での分解は、急げ」
「ガフの扉が開くと同時に、熱減却システムを回収」
「すごい、歩き始めた」
「地上でも歩行を確認」
「コンマ一秒でもいい、奴にアンチATフィールドに干渉可能なエネルギーをしぼりださせるんだ」
「すでに変換システムがセットされています!」
「カウントダウン、進行中!」
「S2機関と起爆装置がリンクされています!、解除不能!」
「羽を広げている、地上に出るぞ!」
そしてセカンドインパクト、か……
画面はトップシークレットと注意表示が出た所で終わった。
僕は加持さんの言いつけ通り、そのディスクを火で溶かす。
加持さんには、このディスクを貰った時に、僕の秘密を明かした、ミサトさんに知らせたように。
それを信じるかどうかは勝手だけれど、「八年前に言えなかった言葉を言うよ」と言うメッセージを何度も聞いてミサトさんが泣いていた事。
そしてそのすぐ後に、加持さんが死んだと知った事も教えておいた。
加持さんはどうするんだろうか?、でも、僕にはそれ以上のことは出来ない。
(真摯に聞いておくよ)
それにそう言って加持さんは笑ったから、僕はもう他人のことと諦めた。
結局はミサトさんよりも、別の何かを選ぶような人だって気がついたから。
アスカのことを頼むのも諦めた。
第弐拾壱話「ネルフ誕生」
セカンドインパクト、その資料も貰った、完璧にエリアを特定した大気成分の変化、微生物に至るまで、全生物の徹底した消滅、爆心地地区の巨大な空洞跡、そして光の巨人。
(神様を拾ったの、それが……)
「神様、か……」
僕はベッドに寝転び、天井を見上げた。
手を頭の後ろで組んだけど、汗ばんでいた上に髪の毛が絡まって気持ちが悪い。
(ゼーレの持つ、裏死海文書、そのシナリオのままだと十数年後に必ずサードインパクトが起こる)
(最後の悲劇を起こさないための組織、それがゼーレとゲヒルンですわ)
(わたしは君の考えに賛同する、ゼーレではないよ)
(冬月先生、あの封印を世界に解くのは、大変危険です)
(なんとなく警告も受けている)
(簡単なんですよ、人を滅ぼすのは)
(だからと言って、君が被験者になることもあるまい)
(全ては流れのままにですわ、わたしはそのために、ゼーレに居るのですから、シンジのためにも)
……この間から、覚えてもいないはずの記憶が蘇ってくる。
どうして?、取り込まれていたって言うのと関係あるのかな?
母さんは、どうしてエヴァに乗ったりしたの?
今でも初号機の中に居るのはどうしてなの?
人類補完計画……
そんなもの、本当に望んでいるの?、母さん。
母さんは僕がこの世界で生きている事を望んでた。
僕が生まれた日のことを教えてくれた。
だから父さんの望みは間違ってるんだ!
それだけは、絶対的に確信できた。
やはり敵は父さんなんだ。
僕はそう見定めた。
誰かがあの人に教えなくちゃいけない。
あれは父さんの身勝手だから。
僕の希望を断つ夢だから。
だから僕は、父さんと戦う決意を固めた。
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