INTRODUCTION
 使徒はもう来ないんじゃないか?
 そんな平和ボケした風潮が広がり始めていた。
 けれど使徒は確かにいるんだ、それもすぐ側に。
「やあ、シンジ君」
「カヲル君……、これからテスト?」
「その前に『連れション』と言う物を体験して来たよ、いやぁ男同士の作り出すハーモニーというのは素晴らしいねぇ?」
「そやろう?、これが男同士の付き合いっちゅうもんや!」
「トウジ……」
 やけに気軽に肩を組む二人に目眩いを感じる。
 ……誰かカヲル君に本当にまともな常識を教えた方がいいのかもしれない。
「なぁにバカな事やってんのよ、このホモ達」
「だれがホモや!」
「きゃー!、さわんないでよ、ホモが移るわ!」
「アホォ!、女のくせになれるもんならなってみぃ!」
 ……この二人、仲が良いんだか悪いんだか。
「まともなのは僕だけか……」
「なに一人で普通人ぶってるのよ、この変態!」
「誰が変態だよ!」
「自覚が無いってのは最低ね?、あんたが一番の変人じゃない!」
 くっ、このって……、え?
「綾波?」
「行きましょう……、時間が惜しいから」
「時間って……、まだあると思うけど」
 むぅって……、口を尖らせて、え?、あ、そっか。
「テストの前にプールで泳ぎの練習するって、約束してたんだっけ」
「えー!?、なによそれぇ!」
 にやりって……、綾波も結構意地悪いよな……
「あたしも行く!」
「……来てもいいけど、水着あるの?」
「シンジとレイだけでしょ?、んなもんいらないわよ」
「なんやとぉ!」
「大胆な事だねぇ?」
 やれやれだな……
 僕は派手に溜め息を吐いた。
 もちろんそれがアスカのからかいだってことは分かってる、なのに……
 にぃって、笑ってる……
 そんなアスカを見て、僕は赤くなってるんだろうなと自己嫌悪に陥った。


 アスカと綾波の事が好きかと言われれば間違いなく好きなわけで。
 でもそれは好意の始めの段階なわけ。
 でもそれよりもっと……、キスしたいとか、裸が見たいとかって思うことは当然ある。
 それは純粋な欲望とか欲求なんだけど、これには嫌な想い出があるからどうしても冷めてしまうんだ。
 それはもう恐怖症に近いだろうな。
 興味はそれなりに持ってるんだけど、開き直ることもできない。
 とりあえず今の気分としては、恋愛したいとは思ってない。
 もっと気楽にしていたいと思う、それが正直な気分だった。



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