「どういうことよそれ!」
ネルフ本部、アスカの怒声が会議室に響き渡った。
「そう言う話があるってだけよ」
「納得できない!、どうしてあたしが……」
「アスカの戸籍が問題なのよね……」
ミサトさんは憂鬱そうに、アスカの個人データを見せてくれた。
そこにはアメリカ国籍の記載がある。
「アスカって……、アメリカ人だったんだ」
「そう言う言い方やめて!」
アスカ、本気で嫌がってる?
「大体、どうして今頃になって……」
「アメリカは四号機の消失と参号機の汚染って言う失態をくり返したでしょ?、だから『次』のエヴァ建造には慎重を期したい……、そのためには経験豊富なチルドレンを、ってわけなのよ」
「ドイツは?、ドイツはどうなんですか?」
「向こうもよ?、S2機関の再開発に着手したから、今度はアメリカ支部のことを踏まえて、他人任せには出来ないって……、それにほら、元々アスカはドイツ支部の所属だったから……」
「取り合いですか」
「まあそう言う事ね?」
「あたしは関係無いわよ!」
「本人の意志は無視ですか?」
僕はすっと目を細めた。
「そう怒らないで……」
ミサトさんは言う。
「そうならないように、アスカの意志を尊重できるよう働きかけているから」
「そう言う事じゃないんですよ」
僕の言葉を奪ったのはカヲル君だった。
「彼らは本質的なことをまるで理解していない……」
「なに?」
「アスカちゃんは二度とエヴァとはシンクロできない、そう言っているんですよ」
「どういうことよ!?」
怒鳴るミサトさん……、アスカは?
アスカは青ざめてるか。
「A10神経を接続させると言うエヴァの特性の問題ですよ、アスカちゃんはシンジ君を得ることで非常に安定してしまっている……、もしシンクロできたとしても起動数値ぎりぎりでしょうね?」
「そんな……」
「レイも同じですよ、同じ理由でもうエヴァを操ることは出来ない……、エヴァは光のようなもので構成されている……、つまりATフィールドですよ、ATフィールドは心の壁である以前に、心の殻でもある、彼女達にはもう、殻に篭る必要が無い」
「いえ、あるわ」
ミサトさん?
どうして……、どうしてそんな目で僕を見るんですか?
「もし……、シンジ君が居なくなったら」
「ミサト!」
アスカの焦る声、でもそれはミサトさんの言葉にぼやけてしまった。
僕が居なくなったら?
そんなことは考えないで欲しかった……
そんな事は思い付かないで欲しかった……
「碇君……」
「泣いているのかい?」
僕は……、僕は。
そう……、僕の不安は、良く当たるから……
みんなに酷い事が起こるから。
僕に教えないで欲しかった。
[BACK][TOP][NEXT]