INTRODUCTION
 話すだけのことは話した。
 父さん達は何とも言えない顔をしていた。
 当たり前か……
 僕の話には矛盾があるから。
 僕は価値が無くなる事を恐れてる。
 エヴァが無ければ、僕はただの子供だから……
 なんの価値も無い存在だから。
 何も無い、何も出来ない、何も考えられない人間なのに……
 僕はエヴァの呪縛から解かれたいと願っている。
 ミサトさんが言っていた。
 自己破壊欲望って。
 僕は僕を壊したいのかもしれない。
 今の僕を壊したいのかもしれない。
 カヲル君は希望と言う言葉を良く使う……
 そうなんだ……
 希望は希望でしかない、夢と言ってもいい。
 手に入れたいって言う望みなんだよ。
 この手にはもう……、何も無いんだ。
 手のひらを見る。
 汗のべたつきが、あれのべたつきに思えた。
 口元に歪んだ笑みが出てしまう……
 元から……、自分勝手に居心地の良い世界にしたかったんじゃないか。
 いまさらなんだよ。
 なにを脅えてるんだ、僕は……
 恐いのは……、今の幸せが壊れる事だ、そうだろう?
 みんなには何もしない……
 みんなの幸せはみんなのものだ。
 だからそれを汚したり壊したり、僕はしない。
 してはいけないんだ、きっと。
 そう言う曖昧な関係を楽しもう。
 好きな人には嫌われて、どうでも良い人と楽しむんだ。
 嫌な奴だな、僕って。
 でもそれでいい。
 昔に帰るって決めたんだ。
 嫌われよう。
 調子の良い奴だって。
 マナはもう呆れ出してる。
 消えてしまえ。
 辛さなんて。
 今はそんな事……、感じていられる時じゃないから。
 世界中でエヴァの建造が進められている。
 父さんは、やっぱり委員会が動いてるんだろうって言ってた。
 僕には、それがなんのことだかわからない、でも、エヴァが攻めて来る。
 それだけで十分だった。



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