「わからない……」
「シンジ君」
「わからない、どうして、なぜなんだよ!」
ガン!
叩きつける拳。
ネルフのロッカーだけあって、特別な硬さを誇っている。
傷んだのはシンジの手の方だった。
「僕が傲慢だって事なのか……」
ごんっと額をロッカーへぶつける。
「アスカちゃんは君に好意を抱いていたよ」
「そう見えていただけなんだ!」
「事実だよ……、だけど、君は受け入れなかった」
「受け入れても良かったって言うの?」
「だめなのかい?」
シンジは額を押し付けたままでかぶりを振った。
「わからない」
「なぜ?」
「アスカ達だって言ってたろう?、僕はいらない人間なんだ」
「エヴァが無いから?」
「そうだよ」
「それは後から取って付けているだけだよ、あの話が出る前から、君は彼女達を避けていた」
「それは……」
「恐いから?、違う、君はただ、知らなかったんだ」
「知らない?」
「愛され方を」
息を呑んだ。
「そうじゃないのかい?」
「その通りだよ」
「だからどうしていいのか戸惑っていた」
カヲルは微笑んだ。
「僕も同じだからね、わかるよ」
「カヲル君……」
「人間は不思議だねぇ、本心は隠された奥底にある、それを見抜いた人だけが、本当に価値ある相手とされるらしい、僕にはわからないよ」
「僕にだって分からないよ」
「そして霧島さんは、そんな君を理解していない」
とどのつまり、カヲルが否定したいのはそこだった。
「でもアスカは違うんじゃないのかい?、少なくとも彼女は、君が傷つく事に酷く敏感だよ」
「そうかな?」
「過敏過ぎる……、まるで自分のことのように苦悩する」
「結局……」
溜め息を吐いた。
「それが嫌になったって事なのかな?」
「かも知れないねぇ」
カヲルは思案顔で、ふむ、と顎を軽く撫でた。
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